投資家向け調査資料 | 2026年9月2日
世界ウェーブプール実勢調査
海外主要3施設(英・豪)の「枠ごとの正規料金」を各公式サイト・公式予約システムから実査し、月次利用実績データと突き合わせた報告書。
0.エグゼクティブサマリー
- 1時間のサーフセッションの世界実勢は約9,500〜18,800円。中核となる中〜上級枠は 11,900〜14,200円 に収れんしており、3施設・2カ国で驚くほど近い水準にある。
- エキスパート枠は明確なプレミアム価格。URBNSURFではExpert枠のみ別建てで17,000〜18,800円。上級者は高単価を受け入れている。
- 回数券・会員で単価下限は約8,900〜11,700円。ヘビーユーザー向け割引後でもこの水準を維持しており、トラッキングデータの想定単価8,000円は保守的(控えめ)な仮定と評価できる。
- 実績では最新施設のシドニーが最強。2025年通年で約14.5万人が利用、8,000円換算で約11.6億円規模。1日平均434人をさばいている。
- 草津(琵琶湖)に当てはめると、冬でも需要はピークの3〜4割残る。気温ベースの試算では冬3ヶ月(12〜2月)のシェアは年間の約13%。一方で草津は25℃超が4ヶ月続き、ピークシーズンは3施設のどこよりも長い。年間10万人(英・メルボルン実績並み)は現実的な中央値である(第5章)。
- 季節性は大きく、冬は夏の1/3程度まで落ちる。各施設とも冬季パス・割引・メンテナンス休業を組み合わせて年間300日前後の営業を成立させている。
1.調査対象の3施設
3施設はいずれもWavegarden Cove型(スペイン・Wavegarden社の造波システム)を採用した内陸サーフ施設で、1時間単位の「枠」を予約販売するビジネスモデルも共通している。
| 施設 | 所在地 | 開業 | 販売単位 | 同時収容(公表値) |
| The Wave | 英・ブリストル | 2019年 | 1時間枠(初級Bay/中上級Reef) | レイク全体 最大80人・最大1,000波/時 |
| URBNSURF Melbourne | 豪・メルボルン(空港隣接) | 2020年 | 1時間枠(The Point 左右2面+初心者Bays) | Point 片側最大18人×2面 |
| URBNSURF Sydney | 豪・シドニー五輪公園 | 2024年 | 同上 | Point 片側12〜18人×2面(枠により変動) |
収容人数の出典: The Wave=第三者ガイド(2026年1月)、Melbourne=旧公式サポート記事ほか、Sydney=公式予約システムの枠別販売席数(2026/9/5実査)。
2.枠ごとの正規料金(2026年9月時点)
The Wave(ブリストル)公式2026料金PDFより
2026年夏季料金(4/2〜9/30適用)。オフピーク=月〜金、ピーク=週末・祝日・学校休暇。全枠にウェットスーツ・ブーツ等の装備が含まれる(中級まではボードも無料)。
| 枠 | 時間 | オフピーク | 円換算 | ピーク | 円換算 |
| Bayセッション(初級・大人) | 1時間 | £44 | 約9,500円 | £53 | 約11,500円 |
| Bayレッスン(初級・大人) | 1.5時間 | £50 | 約10,800円 | £59 | 約12,800円 |
| Reefセッション(中〜上級・大人) | 1時間 | £55 | 約11,900円 | £65 | 約14,100円 |
| Reefレッスン(中〜上級・大人) | 1.5時間 | £61 | 約13,200円 | £71 | 約15,400円 |
| 上級コーチング(大人) | 1.5時間 | £66 | 約14,300円 | £77 | 約16,700円 |
| 子供料金(各枠) | — | 大人より £5〜6 安い設定(例: Bayセッション £39/£47) |
- ピーク割増は全枠で約+18〜20%。夏休み期間(7/13〜9/6)は平日もピーク扱い。
- 回数券: セッション5回 £268(£54/回)〜、2月限定の早割40回 £1,760(£44/回≒9,500円)まで。
- その他収益: 見学入場 £2、場内宿泊(サファリテント 1泊£78〜)、会場貸し £280/日〜、ボードレンタル £15〜25。会員制度は現在リニューアルのため停止中。
- 冬季(10月〜3月)は別料金表(現在未公表)。夏季営業時間は毎日7:00〜22:00。
URBNSURF Melbourne公式料金表+予約画面実査
本波(The Point)はレベル不問の一律価格(Expertのみ別建て)。器材は別料金で、子供も大人と同額。レッスンのみ器材込み。
| 枠 | 時間 | 料金(AUD) | 円換算 |
| Pointセッション(初級〜上級 共通) | 1時間 | $109〜119 (月木/金日・ピーク期+$5) | 約12,500〜13,600円 |
| Expertセッション | 1時間 | $149(通年固定) | 約17,000円 |
| 初心者レッスン(Bays・器材込) | 1.5時間 | $109〜124 | 約12,500〜14,200円 |
| Surf in the Bays(白波練習) | 1時間 | $39〜45 | 約4,500〜5,100円 |
| レンタル(ソフトボード/ウェット) | 1枠 | $10 / $15 | 約1,100 / 1,700円 |
- 回数券: 20回 $1,979($99/回≒11,300円)。会員: 月額$165〜729、実質単価$78〜100(8,900〜11,400円)。
- 冬季施策が厚い: 初心者レッスン50%オフ、Winter Warriorパス(週$549〜)、平日限定デイパス等。
- その他収益: 見学$5、法人サーフ体験 $99/人〜、AI自動撮影の映像販売(Flowstate)、場内レストラン(Three Blue Ducks)、Rip Curl直営店。
- 2025年→2026年に料金体系を再編(レベル別→一律)。旧Cruiser $89比で約2〜3割の実質値上げを実施した形跡。
URBNSURF Sydney公式予約システム実売価格
体系はメルボルンと同一だが、全般に$5〜15高い。最新施設かつ需要の強さを反映した強気の価格設定。
| 枠 | 時間 | 料金(AUD) | 円換算 |
| Pointセッション(初級〜上級 共通) | 1時間 | $114〜124 (曜日・ピーク期で変動) | 約13,000〜14,200円 |
| Expertセッション | 1時間 | $159〜164 | 約18,200〜18,800円 |
| 初心者レッスン(Bays・器材込) | 1.5時間 | $114〜119 | 約13,000〜13,600円 |
| グループコーチング(Point) | 1時間+ | セッション+$35($149〜194) | 約17,000〜22,200円 |
| プライベートコーチング(1対1) | 1時間 | $299 | 約34,200円 |
| Surf in the Bays(白波練習) | 1時間 | $39〜49 | 約4,500〜5,600円 |
| Point貸切(片側1時間・カバナ付) | 1時間 | $2,000〜2,500 | 約22.9〜28.6万円 |
- 回数券: 20回 $2,039($102/回≒11,700円)。会員: 月額$185〜769、実質単価$87〜105(10,000〜12,000円)。
- 見学入場も有料($10/大人)。30日レッスン受け放題パス$499、家族向けFamily Fun Pass $149(4枠分)など商品構成が幅広い。
- 時間帯(早朝・ナイター)による価格差はなし(公式予約システムで全時間帯を実査して確認)。
3.3施設横断・料金比較(円換算・大人)
通常期の代表価格。The Waveは装備込み、URBNSURF 2施設は器材レンタル別(+1,100〜3,700円)。
| 枠の種類 | The Wave(英) | Melbourne | Sydney |
| 初心者レッスン(器材込) | 10,800〜12,800円 | 12,500〜14,200円 | 13,000〜13,600円 |
| 中〜上級セッション(1時間) | 11,900〜14,100円 | 12,500〜13,600円 | 13,000〜14,200円 |
| エキスパート枠 | (Reefと同額) | 17,000円 | 18,200〜18,800円 |
| 白波・入門プレイ枠 | 約2,200円(参考値) | 4,500〜5,100円 | 4,500〜5,600円 |
| 回数券での実質下限(1枠) | 約9,500円 | 約11,300円 | 約11,700円 |
| 会員での実質単価(1枠) | (会員停止中) | 8,900〜11,400円 | 10,000〜12,000円 |
| 見学入場 | 約400円 | 約600円 | 約1,100円 |
読み取り: 中核のサーフ枠は3施設とも12,000〜14,000円帯に収れん。割引後の下限でも9,000円を割らない。単価を崩さず、①上級者向けプレミアム枠(+30〜40%)、②低単価の入門プレイ枠で裾野拡大、③冬季の期間限定割引という3層構造で需要を最大化しているのが世界の共通解である。
4.利用実績と季節性
提携先経由で入手した月次トラッキングデータ(2024年9月〜2026年7月)より。売上は「利用客数×8,000円」の試算値であり実売上ではない。
月別利用客数の推移(2024年9月〜2026年7月)
単位: 人/月。The Waveは2026年1月がメンテナンス休業、Melbourneは2025年8月が改修等により営業5日のみ。
The Wave(英)
URBNSURF Melbourne
URBNSURF Sydney
施設別: 月別利用客数(棒グラフ)× 現地の平均気温
各施設とも上段が利用客数(人/月・3施設共通スケール)、下段が現地の月平均気温(実線=最高気温、破線=最低気温)。2026年4月以降の気温は気象再解析データ(ERA5)により補完。「休」=メンテナンス休業月。
2025年(暦年)の通年実績と、単価想定を変えた場合の年間売上規模の試算。
| 施設 | 年間利用客数 | 営業日数 | 平均人数/日 | 売上試算@8,000円 | @10,000円 | @12,000円 |
| The Wave | 94,984人 | 275日 | 320人 | 7.6億円 | 9.5億円 | 11.4億円 |
| Melbourne | 96,385人 | 305日 | 309人 | 7.7億円 | 9.6億円 | 11.6億円 |
| Sydney | 145,130人 | 338日 | 434人 | 11.6億円 | 14.5億円 | 17.4億円 |
- 季節のピークは夏に集中。豪州2施設は12〜3月(南半球の夏)、The Waveは5〜8月がピーク。冬季の月間利用はピーク月の1/3前後まで低下する。
- 気温との連動が3施設共通で確認できる。集客のピークは平均最高気温が25℃前後(豪州2施設)・20℃超(英)となる月とほぼ一致し、最高気温が15℃を下回る月が底になる。気候条件を集客計画に落とし込む際の基礎データとなる。
- シドニーは開業2年目で最も高稼働。ピーク月は1日平均550人超。週末の上級枠は完売が常態化している(予約システム実査で残席ゼロの枠を多数確認)。
- 直近12ヶ月(2025年8月〜2026年7月)では The Wave が約11.2万人と伸びており、記録的な暖夏(2026年7月の平均最高気温26.9℃)と重なって月2.2万人超を記録。成熟施設でも成長余地があることを示す。
- メンテナンス・改修による休業が定期的に発生。年間営業日数は275〜338日が実勢で、事業計画上は300日前後を前提に置くのが妥当。
データ注記: 元データのThe Wave 2025年8〜12月の利用客数は、シート間で不一致があった(例: 8月が22,929人と13,697人の2通り)。本報告書では「平均利用人数×営業日数」と整合する後者の系列を採用している。また元シートの「総計」列は2026年6・7月が集計から漏れていたため、月次値から再計算した。
5.琵琶湖(草津)への当てはめ — 想定集客カーブ
「日本の冬に客は来るのか」——投資家が最も懸念するこの問いに答えるため、3施設×23ヶ月の実績から気温と需要の関係を数値化し、建設予定地・草津(烏丸半島)の気候に当てはめた。
手法: 各施設の「営業日あたり平均利用人数」を施設ごとのピーク月=100として指数化し、月平均最高気温の5つの帯ごとに平均した(対象65ヶ月)。得られた需要指数は 10℃未満=30 / 10〜15℃=45 / 15〜20℃=57 / 20〜25℃=72 / 25℃以上=94。これを草津の月別平均気温(ERA5・2023〜25年の3年平均)に適用した。
草津(烏丸半島): 月別想定来場者 × 平均気温
棒=標準シナリオ(年間10万人)の月別想定来場者。実線=平均最高気温、破線=平均最低気温(2023〜25年平均)。カーソルを乗せると3シナリオの人数を表示。
月別の想定来場者数。保守=年8万人(ベンチマーク下回り)、標準=年10万人(英・メルボルン実績並み)、強気=年14.5万人(シドニー実績並み)。
| 月 | 平均気温(最高/最低) | 需要指数 | 保守: 年8万人 | 標準: 年10万人 | 強気: 年14.5万人 |
| 1月 | 8.0℃ / −0.2℃ | 30 | 3,100人 | 3,800人 | 5,600人 |
| 2月 | 8.4℃ / 0.8℃ | 30 | 3,100人 | 3,800人 | 5,600人 |
| 3月 | 13.2℃ / 4.1℃ | 45 | 4,600人 | 5,700人 | 8,300人 |
| 4月 | 19.0℃ / 9.7℃ | 57 | 5,800人 | 7,300人 | 10,500人 |
| 5月 | 22.2℃ / 13.4℃ | 72 | 7,300人 | 9,200人 | 13,300人 |
| 6月 | 26.3℃ / 18.6℃ | 94 | 9,600人 | 12,000人 | 17,400人 |
| 7月 | 31.3℃ / 23.9℃ | 94 | 9,600人 | 12,000人 | 17,400人 |
| 8月 | 32.1℃ / 24.8℃ | 94 | 9,600人 | 12,000人 | 17,400人 |
| 9月 | 29.8℃ / 22.5℃ | 94 | 9,600人 | 12,000人 | 17,400人 |
| 10月 | 22.2℃ / 15.4℃ | 72 | 7,300人 | 9,200人 | 13,300人 |
| 11月 | 16.1℃ / 8.4℃ | 57 | 5,800人 | 7,300人 | 10,500人 |
| 12月 | 10.8℃ / 2.5℃ | 45 | 4,600人 | 5,700人 | 8,300人 |
- 冬もゼロにはならない。草津の冬(平均最高8℃台)は英The Waveの冬(5.6〜8.6℃)と同条件で、The Waveはその気温帯でも1日188〜214人を集めている。需要指数30はこの実績の平均であり、机上の仮定ではない。
- 草津のピークシーズンは3施設より長い。25℃以上の「最需要帯」が6〜9月の4ヶ月連続。ブリストルでこの帯に入るのは年1〜2ヶ月しかない。
- 水準感: 標準シナリオ(年10万人)はブレンド単価1万円で年商約10億円。保守で8億円、シドニー並みの強気なら14.5億円の規模となる。
- 冬の谷はベンチマークと同じ手当てが可能。冬季パス・平日割引・レッスン集中・年次メンテナンスの冬季集約など、3施設が実際に行っている閑散期対策(第2章)がそのまま適用できる。
試算の前提と限界: ①草津の7〜8月(平均最高31〜32℃)に相当する実績はベンチマークに存在しないため「25℃以上」帯と同じ指数を適用した(酷暑による日中の落ち込みは未調整。ナイター・早朝枠での補完が現実解となる)。②降水・湿度・学校休暇・開業後のランプアップ・料金差は未調整。③施設規模・運営水準は3施設と同等と仮定。④需要指数は「営業日あたり」ベースであり、営業日数の設計(冬季メンテ集約等)は別途の計画事項。
6.投資判断への示唆
- 想定単価8,000円は保守的。正規料金の実勢(12,000〜14,000円)、割引後の下限(約9,000〜11,700円)、低単価の入門枠の存在をならすと、ブレンド単価は9,000〜12,000円が現実的なレンジ。トラッキングデータの売上試算は下振れ側の見積もりであり、上表のとおり単価想定次第で売上規模は2〜5割増える。
- 「枠×レベル」の値付けはシンプル化が世界の潮流。メルボルンはレベル別価格を廃止して一律化した上で実質値上げに成功。運営面でも「わかりやすい一律価格+Expertプレミアム」が支持されている。
- ピーク/オフピーク差は小さめに設計されている。英+18〜20%、豪+$5(4〜5%)程度。大きな価格差より、冬季パス・回数券で閑散期の稼働を埋める設計が主流。
- サーフ以外の収益源が層を成す。レンタル(豪は1枠あたり+1,100〜3,700円)、AI自動撮影の映像販売、F&B、見学入場、法人イベント($99/人〜)、貸切(シドニーは1時間22.9万円〜)、宿泊(英)。単価×客数の本業に対し、これらが単価を底上げする。
- 新しい施設ほど高く売れている。開業2年目のシドニーは料金・集客・営業日数のすべてでメルボルンを上回る。設備の新しさと立地(都市近接)が価格決定力に直結している。
7.出典と留意事項
主な出典(いずれも2026年9月2日閲覧)
- The Wave: 公式2026年料金PDF(thewave.com掲載・2026年2月版)、公式予約ページ thewave.com/book-now、装備・営業時間等の各公式ページ
- URBNSURF(両拠点): 公式料金比較ページ urbnsurf.com/compare-pricing、公式予約システム book.urbnsurf.com の実売価格(拠点別に実査)、回数券・会員・冬季パス各公式ページ
- 利用実績: 提携先提供の月次トラッキングデータ(Flowstate集計・2024年9月〜2026年7月)
- 気温: 2026年3月まではトラッキングデータ記載値、2026年4〜7月は Open-Meteo(ERA5再解析・各施設所在地の座標で取得)による補完値。両者が重複する2026年1〜3月で突き合わせ、誤差が概ね±1℃以内であることを確認済み。
- 草津(烏丸半島)の気温: Open-Meteo(ERA5)の2023〜25年・3年平均。第5章の想定集客カーブは本報告書独自の試算であり、手法・前提は同章に明記。
- 為替: 2026年9月2日レート(£1=216.5円、A$1=114.4円)。円換算は概数(100円単位)。
留意事項
- The Waveの冬季(10〜3月)料金は未公表のため本書は夏季料金。入門プレイ枠(£10)は2022年時点の情報で現行未確認。
- メルボルンの週末価格は公式表($114)と冬季の実売($109)に乖離があり、冬季は実質フラット運用とみられる。
- 売上はすべて「客数×単価」の試算であり、各社の決算数値ではない。貸切・法人・学校団体など見積制の商品は含まれない。
- URBNSURFのPointセッションは子供(6〜12歳)も大人と同額(公式予約システムで確認)。